革の仕上げとは。染料や顔料の使い分けで見た目はどう違う?

コラム
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なめした後の革は、『仕上げ』という工程を経て状態が整えられていきます。

この仕上げの工程内にあるのが「染色(せんしょく)」とその後に施される「塗装(とそう)」という手順。

これによって革の状態が大きく変わるんです。

売られている革製品は、透明感のあるナチュラルな革っぽい外見だったり、鮮やかな色味だったりと色んな見た目をしていますよね。

その違いは、染色や塗装の方法が異なるから。

今回は染色や塗装にどんな種類があるのか、それによって出来上がる革がどう違ってくるのかを説明していきます。

本革と合皮の違いを知っている人はそれなりにいます。

でも染色や塗装の仕上げまでわかっている人って、少ないんですよ。

だからこれを理解したら、かなり革に詳しい人だと尊敬されちゃうかも!

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革の仕上げ「染色」「塗装」とは

上の図は皮から革ができるまでの工程が書かれています。

丸をつけてある所が染色と塗装のタイミングになりますよ。

どちらも『染料』と『顔料』を使い、その違いによって完成する革の印象が変わってくるんです。

具体的にどんなことなのか、染色、塗装の順番に詳しく説明していきますね。

染色とは最初に色付けをする工程

では改めて、染色は革になるまでの工程の中で、丸で囲ったこの段階で行われます。

染色の工程表

革に色をつけていく作業をするのですが、ここで方法は大きく2種類に分かれます。

  • 「染料」を使って革の内部まで色を染み込ませる方法
  • 「顔料」を使って革の表面に色を乗せる

この2つの方法です。

染料と顔料について、それぞれの違いを簡単に表で比較してみるとこうなります。

着色の仕組み 色の印象 光による変色のしやすさ
染料 浸透して染まる 透明感がある 変色・退色しやすい
顔料 表面を覆って色付け 元の色が隠れる 変色・退色しにくい

着色の仕組みも違いますし、色付いた印象や完成後の変色の有無も異なるんです。

それでは、染料と顔料の色付け方について順番に見ていきましょう。

染料を使って繊維まで色付ける

染料を使うと、繊維まで浸透させて染めることができます。

色味は透明感があり、グラデーションをつけた染め方も可能。

下地の色を完全に覆うことはできないので、真っ白な色に染めることはできません。

革せんせい
革せんせい

水に弱いことと、色落ちがしやすいので色移りには注意が必要です。

しかし元の革の色味が残るので革そのものの雰囲気が楽しめ、経年変化もするので、革好きの人からは人気があります。

顔料を使って表面に色を塗る

引用元:https://kawanara-matsumoto.com/%E9%A1%94%E6%96%99%E4%BB%95%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%AE%E9%9D%A9%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

顔料を使った場合、革の表面に色が塗られて色付けされていきます。

顔料は透明度が低く、濃淡の差はあまりつけることができません。

よく発色するので、鮮やかな色合いに仕上がるのが特徴。

また、顔料を乗せることによって革の傷が目立ちにくくなるので、見た目が綺麗なものが多いです。

しかし革の元の雰囲気がわかりにくくなり、染料で染めたものよりも革らしい雰囲気が少ないのが残念なところ。

紫外線などによる変色や退色が少ないため、買ったままの色味が長く楽しめます。

革せんせい
革せんせい

それに色落ちしにくいので、肌に接する洋服などはこの方法を使うことが多いんです。

革は染料と顔料のどちらかの方法で染色された後、柔らかくなるための工程や乾燥などいくつもの工程を経て整えられていきます。

そしていよいよ表面が整ってきた頃に、塗装という工程に入ります。

塗装とは本格的に整える“革のお化粧”

塗装とは、丸で囲ったこの工程のことです。

塗装の工程表

塗装では、先程の染色とはまた別の方法で、色をつけたりツヤを出していきます。

染色はあくまでこの塗装の前段階の下地作りであり、革の表面を本格的に整えていくのはここからになるんです。

さらにこの工程は、塗装を重ねれば重ねるほど、革の耐久性もアップさせる効果もあります。

まちだ
まる子

塗装の作業は『革にお化粧をする』と例えられることが多いそう。

女性でもお化粧することによって肌質をツヤ感のある感じにしたり、セミマット肌と言われる陶器のような感じにしたりと印象を変えますよね。

それと同じように、革の表面にも「塗装」のお化粧を施していくことで、革の印象を様々に変えることができるんです。

その塗装の方法は、これまた染料と顔料を使うんですが、大きく分けて以下の3種類となります。

  • アニリン仕上げ
    染料を使って、革の表情を生かして仕上げる
  • セミアニリン仕上げ
    染料に顔料を混ぜ、革にある傷や色ムラを整えて仕上げる
  • カバーリング仕上げ
    顔料を使って、ハッキリ色をつけて仕上げる

それでは、それぞれの仕上げ方について詳しく見ていきましょう。

アニリン仕上げは透明感ある仕上がり

引用元:https://shop.kyohshin.net/anilinefix.html

アニリン仕上げとは、石油が原料の「アニリン」という合成染料を使って仕上げる方法です。

出来上がる革は透明感があり、革の表面の状態がそのまま生かされています。

透き通るような光沢があるのが特徴ですよ。

セミアニリン仕上げは傷を目立たせない

セミアニリン仕上げは、アニリンを中心に顔料も混ぜて仕上げる方法です。

顔料で整えられているので、出来上がる革は傷や色ムラがあまり目立ちません。

アニリン仕上げの革と比べると、透明感が低く光沢も控えめです。

カバーリング仕上げは鮮やかな色味に

カバーリング仕上げは、主に顔料を使って仕上げる方法です。

アニリン仕上げやセミアニリン仕上げと比べると、圧倒的に透明度が低い革になります。

ツヤ感はあまりなく、全体が均一な鮮やかな色に仕上がります。

そうなると、もともとの革の傷などはわからなくなりますよね。

生産数が多い高級ブランドのバッグなどは、このカバーリング仕上げのものが多いです。

革せんせい
革せんせい

元の革の状態に左右されずに、全ての品質を一定に揃えたいためです。

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素上げという自然な仕上げ方もある

染色の工程で染料を使用して革を整えたあと、ほとんど塗装を行わない革の事を「素上げ(すあげ)」と呼びます。

素上げで仕上げられた革はもともとの色味のままなので、茶色っぽい色やベージュっぽい色をしています。

しかし塗装をしていないと耐久性が低く、傷がつきやすかったり水に弱いという欠点も。

でも、そんなところがまた革の良い所でもあるんです。

持ち主の使い方によって変化の差が大きいので、革を自分で育てているという実感を強く感じられます。

だから素上げを好む人も沢山いるんですよ。

染料を使って仕上げる革はもとが綺麗

最後に、スッピンが綺麗な皮は、厚化粧をする必要がないという話をしますね。

まちだ
まる子

まー、羨ましい!!

「皮」とはなめし工程前までの動物の皮のことを指します。

染色と塗装をして最終的に出来上がる革は、印象がはっきりと異なります。

染色や塗装で顔料を使って仕上げた革は、見た目の色や質感が均一。

それに比べて染料を使って仕上げられた革は、シワやちょっとした傷などがわかるナチュラルな印象の革になります。

どちらが好みかは、人によって分かれるところです。

しかし、染料のみで仕上げられた革というのは傾向として、

ナチュラルな仕上げでも粗が目立たない=元の皮(スッピン)が綺麗

ということが言えるんです。

見た目が均一な革の方が綺麗だと、つい思ってしまいがちですよね。

まちだ
まる子

お化粧で騙される男性の気持ちがわかってきたわ・・・

でもよくよく考えると、革の風合いが残るナチュラル仕上げの方って、元の皮の質が高くて表面が綺麗じゃないと成立しないんです。

ナチュラルな印象の革製品のほうが値段が高い傾向があるのは、元の皮も良いものを使っているからなんですよ。

まちだ
まる子

納得!

まとめ

革の仕上げについて、染料や顔料を使うことで印象の異なる革が出来上がることがわかりましたね。

染料の透明感ある自然な革の仕上がりも魅力的ですが、鮮やかな色の革ならファッションに合わせて選ぶといった楽しみ方もあります。

素上げで仕上げられた革は元がとても綺麗なべっぴんさんなので、じっくり眺めてみて下さいね。

カバーリング仕上げの革製品を見て「この革はどんな傷や色ムラがあったんだろう?」なんてスッピンを想像するのも面白いですよ。

まぁ、革に詳しくない人に言ったら、ちょっと驚かれそうな発想ではありますが・・・。

何はともあれ、あなた好みの仕上げ方の革を選んで、革ライフを満喫しちゃいましょう!

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